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ソフトウェア開発におけるAIの活用──その利点と限界: テックエージェンシー代表の視点から考察する
ソフトウェア開発におけるAIの活用──その利点と限界: テックエージェンシー代表の視点から考察する
人工知能(AI)は、ソフトウェア開発の現場においてますます身近な存在となりつつあります。コードを生成したり、最適化の提案を行ったり、テストの自動化を支援するツールは、開発スピードの向上と労力の削減を約束します。多くの開発チームにとって、これはまさに生産性向上の夢のような話に聞こえるかもしれません。 しかし、技術の大きな変化が訪れるたびに立ち止まって考えるべき問いがあります。それは、「AIに過度に依存するとどうなるか?」そして「AIは本当にソフトウェア開発者の代わりになれるのか?」ということです。
執筆者
Ariadne Mavrogenis
(ChatGPTによる翻訳)
最終更新日
MAY 27, 2025
トピック
#business
所要時間
11 min read

Japan IT Week 2025 での所感
弊社は 2025 年 4 月、国内最大級のテクノロジー展示会である「Japan IT Week」に出展者として参加しました。東京ビッグサイト(東京国際展示場)の広大な会場を歩いていて、ある傾向が明らかに目に入りました。それは、「AI 一色」という感じでした。
大手企業からスタートアップに至るまで、ほぼすべてのブースが「AI 搭載」ソリューションを掲げていました。カスタマーサポート向けの AI、自動化のための AI、分析のための AI、そしてもちろんソフトウェア開発向けの AI も含まれていました。多くの展示からは「競争力を保つには、できる限り AI に任せるべきだ」というメッセージが読み取れました。
しかし、特にソフトウェアエンジニアリングのように、品質・文脈・判断力が極めて重要な分野においては、こうした過度な依存が思わぬコストをもたらす可能性もあります。
AI ブームの裏側にある現実
AI は、現代において最も注目されている技術の一つです。ビジネス課題を解決する万能のツールとして語られる一方で、人間の仕事を奪う脅威として描かれることもあります。しかし、実際のところ真実はその中間にあります。
確かに AI は、定型業務の自動化、コンテンツ生成の加速、データ分析による意思決定の強化といった点で大きな進化を遂げています。しかしその一方で、まだまだ制約も多く、人間の判断力や感情の理解、曖昧な状況への柔軟な対応といった能力は持ち合わせていません。
AI の恩恵を真に活用するには、誇張された期待から距離を置き、AI が「できること」と「できないこと」を冷静に見極める必要があります。
開発者の視点から
Scriptide の CEO であるDaniel Fazekas(ダニエル・ファゼカシュ)はこう語ります。
「日本を含む多くの企業の経営者は、近い将来 AI が人間のソフトウェアエンジニアを代替すると考えています。ですが、過去 10 年間にわたってソフトウェア開発に携わり、多くのデジタルプロジェクトを成功に導いてきた立場から、私はあえて異論を唱えたいと思います。AI は非常に強力なツールですが、効果的なソフトウェア設計の根底にある“人間の思考”の代わりにはなり得ません。」
現在開発の現場で使われている「AI」の多くは、ChatGPT や DeepSeek、Claude といった大規模言語モデル(LLM)です。これらは確かに高度で、自然な文章を生成し、ある程度動作するコードを書くこともできます。しかし、「論理的に考える力」や「ビジネスゴールの理解」、「システム設計に対する洞察力」はありません。あくまでパターン予測に基づいてコードを生成しているに過ぎないのです。
AI が生成するコードは「ほぼ正しい」ことが多いですが、ソフトウェア開発において「ほぼ動く」は「動かない」と同義です。オフ・バイ・ワンエラーやセキュリティ上の欠陥は、表面上は見えにくいですが、実運用において大きな問題を引き起こしかねません。
そして何より重要なのは、ソフトウェア開発とは単にコードを書くことではなく、「ユーザーのニーズを理解し、複数の選択肢を比較検討し、長期的価値のあるシステムを構築すること」だという点です。
AI が得意とすること
もちろん、Scriptide では AI ツールの活用に前向きで、日常的に使用しています。
たとえば、繰り返しの作業の自動化、ドキュメントの下書き、中央ヨーロッパと日本のチーム間における言語の壁の克服などに活用しています。技術仕様の翻訳、会議の議事録要約、報告書の初稿作成といった作業が、AI によって大幅に効率化されました。
また、AI は若手〜中堅の開発者にとっても強力な学習支援ツールになります。具体例を見ながら学ぶ、アイデアを広げる、解決策を探るといったシーンで大きな助けとなります。
ただし、重要なのは AI は「補助役」であり、「代替者」ではないということです。
過度な依存がもたらすリスク
一見すると、AI への依存は効率的に見えるかもしれません。しかし長期的に見れば、以下のようなリスクが潜在的に存在します。
① コード理解の浅さ
AI が生成したコードをそのまま使うことで、開発者がその中身を理解しないままプロジェクトが進行する恐れがあります。その結果、将来的な改修やデバッグが困難になります。
Addy Osmani(アディ・オスマニ)は自身のブログ記事「AI Won't Kill Junior Devs – But Your Hiring Strategy Might(AI は若手開発者を潰さないが、採用戦略が潰すかもしれない)」で次のように述べています:
「AI に依存しすぎると、スキルが退化する可能性があります。まるで算数を学ばずに電卓に頼るようなものです。確かにすぐに答えは出ますが、電卓が間違っていたり、式そのものを理解する必要がある場面では対応できません。バランスが重要です。開発者は AI を強力なツールとして使いながらも、自力で問題を解決し、AI の回答を検証し、理解を深める努力を続けなければなりません。」
② 技術的負債
AI は「とりあえず動く」コードを生成しますが、ベストプラクティスや将来的な保守性を考慮していないことがあります。こうしたコードは後に多くの手直しや全面的な書き直しを必要とするリスクがあります。
③ チーム内の協働・知識共有の低下
健全な開発チームでは、コードレビューを通じて互いに学び合い、スキルを高めていく文化があります。しかし、AI がそのプロセスを肩代わりするようになると、チームワークや学びの機会が損なわれる可能性があります。Osmani はこう警鐘を鳴らしています:
「AI 時代におけるメンタリングとは、基本を徹底的に教え、AI が見落としがちなギャップを埋めることを意味します。」
④ AI への過信
AI が生成するコードは一見すると正しく見えるかもしれませんが、実際には見えないバグやセキュリティホールが含まれていることがあります。人間のレビューを経なければ、重大な問題に発展する恐れもあります。
最後に
AI は非常に有益なツールですが、決して人間の判断力や責任を置き換えるものではありません。真に成功する企業は、開発者に AI を活用させつつも、意思決定には必ず人間が関与するというバランスを大切にしている企業です。
適切なバランスを取ることで、AI の力を最大限に活用しながら、品質・責任・成長を犠牲にすることなく、より良いソフトウェア開発を実現できます。
Scriptideは、カスタムで複雑なB2Bソフトウェアソリューションに特化した高度なソフトウェア開発会社です。デジタルトランスフォーメーション、ウェブおよびモバイル開発、AI、ブロックチェーンなど、さまざまなソリューションを提供しています。
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